『ソロモンの指環』 コンラート・ローレンツ 日高敏隆訳

「動物行動学入門」という副題がついているが、学問の本とは思えない、とてもやさしくて、面白い、読みやすい、生物の観察記のようだ。翻訳も素晴らしい。小中学校時代にこんな本を読んでいたら、もっと理科に興味を持ったろうに、ともったいなく思う。

アクアリウムに関する話で一番引き込まれたのは、やはり「魚が思案するのをみた」のあたり。本当にそれが「思案」だったのかはわからない。が、この状況の描き方と語り口によって、そんなことはどうでもいいように読み進んでしまう。

ある動物が負けを認めた時に勝者に急所をさらす行為が、勝者の攻撃を抑制するのだと解釈し、聖書の「汝の右の頬を打たば、左をも向けよ」という文につなげていくのも面白い。人間がその種の動物と違うことは明らかだろうけど。

この本で一番笑えた箇所は、著者が近所から変な目で見られるくだりだ。電車の中で読んでいる時は、著者の写真を見ないほうがいい。変な目で見られたくなければ。

ソロモンの指環―動物行動学入門
King Solomon's Ring←その後洋書を購入。ドイツ語の原著の英訳版
King Solomon's Ring: New Light on Animal Ways (Routledge Classics)←上よりちょっと安いけど、表紙をみて上のほうを選んだ。


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