『木綿口伝(ものと人間の文化史)』

木綿口伝 (ものと人間の文化史)

棉栽培・綿・木綿についてもっと知りたくて借りた本のうちの1冊。
「ものと人間の文化史」シリーズは興味深いタイトルが多いが、ページ数も多く字も小さめ、結構読み応えがあるというのは以前借りた本から知っていた。今回もなかなか読み進められそうにないと予想していたが、『木綿口伝』では別の意味で苦労した。まさか電車の中で涙を見せるわけにもいかず必死でこらえること数回。特に著者の父親の話では一旦読書を放棄、先の章に進んだ。口絵の野良着写真だけでもぐっとくる。あまりに美化が過ぎるような気もしないでもないが、過去の真実は判らない。この本では棉を育て糸にして布にして…という過程のなかには、涙無しには語れないような物語があると述べられている。

私は母の影響で小中学生の頃にも編物をしていたが、毛糸がもつれると、解こうとしばらく挑戦した後、結局切ってしまっていた。それがここ数年はしっかりと解くことが出来るようになった。落ち着いて、力任せに引っ張らず、よく見て焦らず取り組めば必ず解けることが判っているからだと思う。最近昔の自分との違いに気がついて、成長したなと自己認識(汗)していたところ、『木綿口伝』に似たような記述があった。反物用の糸と私の毛糸では解く難しさは全く異なるが、意味するところは同じだと思う。糸は真直なものである。

また、糸を紡いでいると、途中切れてしまったり、ほんの数センチがあぶれてしまうことがあるのだが、それをなかなか捨てられない。また織りに入ると経糸の数センチが残ってしまったり。昔の人はそれも結んで繋いで丸めて保存し、たまったらヨコ糸に織っていたとのこと。素晴らしい。裂き織りの糸版だ。結び織りといって縁起のいい織物といわれたそうな。

その他覚書。藤布は茨よけに最適/一日に綿糸に紡ぐ量約170g、一反分に4、5日かかる/藍の紺色の中に草木染めの赤、紫、茶、鼠色を配す/ぜんまい織り

綿に興味のない人も読み物として楽しめる本だと思う。

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