『ぼくはお金を使わずに生きることにした』

ぼくはお金を使わずに生きることにした


タイトルと表紙から受ける印象より、ずっと示唆に富む内容だった。読みやすさは最初に受けた印象の通り、人にお勧めできる易しさ。本当に理解できるかどうか、というか、理解しようと思えるかは別だけど…(否定を前提に読む人には何を言ってもムダという意味で)。ま、自分でぼんやり考えていたことを、こういう本の文章で読めて、嬉しかった。



覚書。
P17 「世界的な問題(中略)の原因とは、消費者と消費される物との間の断絶である。われわれが皆、食べ物を自分で育てなくてはならなかったら、その三分の一を無駄にするなんてことはしないだろう。机やイスを自分で作らなければならなかったら、部屋の模様替えをしたとたんに捨ててしまったりはしないだろう。目抜き通りの店で気に入った服も、武装兵士に監視されながら布地を裁断する子供の表情を見ることできたら、買う気が失せることだろう。豚の屠畜処理の現場を見ることができたなら、殆どの人がベーコンサンドイッチを食べるのをやめるだろう。飲み水を自力できれいにしなければならないとしたら、まさかその中にウ(略)コはしないだろう」
P128 「冬は週に一度しか体を洗わなかったし、せっけんも使わないんだ(略)石けんを使いたくない人、ひんぱんに体を洗いたくない人は、有機栽培されれた新鮮なビーガン食をとることだ。健康な人の汗は、塩水とそう変わらない。体内にゴミを入れれば、必然的にそういう匂いを発することになる」アトピーになって、体を洗わないことも治療と言われ、できるだけ入らないでいた頃、髪のべたべた感を心配した。でも洗わないでいるうちに、べたべたになるまでの期間がのびた。それまで余計に皮脂をだしていたのだ、洗いすぎだったのだと気づいた。それまでも毎日洗っていたわけではなかったのに。
P228 「ぼくはもっと『感覚的に見る』ように自分を変えたかった。われわれの昨今の文化では知性が偏重され、強い知性をひけらかす人物がよしとされる一方で、物事を直感でとらえ理解する人はずっと低く見られている」。本当に、「何となく感じること」を大事にしたい。その感覚を鍛えたい。
P275 「物の本当の価値 (略)『ズッキーニ半キロに1.5ポンドも払うなんてありえない』という人たちは、化石燃料を多用せずにズッキーニを有機栽培するのにどれだけの労力が必要か、体験したことがないのだ。大半の生産者が最低賃金すれすれで働いているが、その場合ですら、この重量のズッキーニに必要な作業すべてを約五分でこなさないと赤字になる。(略)エネルギーを大量に消費する機械を使わず、人間の手で作業している生産者たちに向かって、それ以上のスピードで働けといえるものだろうか。
 自分が使うものを自分の手で作るようになるにつれて、あるいは自分で作らないまでも、作る人との距離が縮まるにつれて、物の本当の価値に敏感になる」

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